予防のための医療費が控除される「セルフメディケーション税制」

子どもが生まれてから毎年インフルエンザの予防接種を家族全員で受けています。今年も先日接種を済ませてきました。

インフルエンザの発生状況は厚生労働省が毎週プレスリリースを出しているのですが、今年の44週目(10月30日~11月5日)でのインフルエンザ定点あたり報告数(1医療機関当たりの平均報告数)は全国で0.49(昨年同時期は0.59)となっており、

10月初めの40週から見ると0.21 → 0.17 → 0.24 → 0.36 → 0.49と、徐々に数が増えてきているのがわかります。

ワクチン接種してもかかるときはかかるので、油断せずに予防に努めたいと思います。

インフルエンザに限らず、自営業にとって病気で動けなることは収入の減少に直結するので、なるべく予防できるものは対策しておきたいところ。ということで、今回は予防のための医療費で税金が安くなる「セルフメディケーション税制」について書きました。

今年から医療費控除の特例がスタート

病気などで一定以上の医療費がかかったときに所得税の控除が受けられる「医療費控除」を聞いたことがある人は多いと思いますが、今年からこの医療費控除に特例が設けられています。

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日以降に、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるものです。

お役所の説明なのでイマイチわかりにくいですが、ざっくり言うと「病気の予防に努めている人が薬局などで買った医薬品の金額から税金の控除をしますよ」という制度です。

利用するためには2つの要件をクリアする必要があります。

  1. 「健康の維持増進及び疾病の予防への取組」を行っていること
  2. セルフメディケーション税制の対象になる「特定一般用医薬品等」を購入していること

1番目の「健康の維持増進及び疾病の予防への取組」は具体的な例が国税庁のサイトに載っています。

1 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】
2 市区町村が健康増進事業として行う健康診査【生活保護受給者等を対象とする健康診査】
3 予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種
4 勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
5 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
6 市町村が健康増進事業として実施するがん検診

実は冒頭に書いたインフルエンザの予防接種も取り組みに含まれています。つまり私は1つ目の要件クリアということになります。この他にも勤務先の定期健診も予防の取り組みに含まれているので、会社に勤めて定期健診を受けている人も要件を満たしますので、1つめのハードルはそんなに高くないですね。

なお、これらの取り組みを行った記録として、予防接種の領収書や健診の記録などが必要になりますので、保管しておきましょう。ただし、この予防の取り組みのための費用(予防接種代・健診費用)などは、特定一般医薬品の購入費にはならない(税額控除の対象にならない)ので、注意しましょう。

Q8 「一定の取組」にかかった費用も、所得控除の対象となりますか。
本税制において所得控除の対象となるのは、特定成分を含んだ OTC 医薬品(いわゆるスイッチ OTC 医薬品)の購入の対価額であり、健康診査等の「一定の取組」にかかった費用は所得控除の対象にはなりません。

出典 厚生労働省 セルフメディケーション税制に関するQ&A より

2番目の「特定一般用医薬品等」の購入は、対象となる医薬品リストが厚生労働省のサイトに掲載されていますが、見るのが大変です。もっと簡単に見分ける方法があります。

対象となる医薬品の場合、パッケージにこのマークが付いてます。薬局によっては買い物した際のレシートに「セルフメディケーション税制の対象」とわかる印がついていることもありますので、買い物のときに確認してみましょう。ただし金額に下限があり、一家全員が使う医薬品を合計して1万2千円を超えた分が控除の対象になります。

なお、レシートは控除を受ける場合に保管が必要になるので、捨てないように注意!

どれくらい税金が少なくなるのか

個人の所得から控除されるため、いくら少なくなるかは人によって異なりますが、ざっくり把握するには、厚生労働省のサイトにある図がわかりやすいです。

上記の例は、対象になる医薬品を年間で2万円購入した場合のケースです。減税額は・・・

  • 所得税:1600円の減税効果
  • 個人住民税:800円の減税効果

2万円払って2400円のバック! ・・・微妙?

まぁ、もともとの医療費控除からして、年間で原則10万円以上の医療費を負担した場合の超えた分だけ控除する制度だったので、申告する手間に対するリターンは微妙な制度でしたが。そんな微妙な控除額のところまで原則に合わせなくても・・・というのが正直なところ。

予防医療費での控除という目の付け所は良かった

従来の医療費控除は、あくまでも病気などの治療にかかった医療費しか対象にならないため、病気にかかった人の費用は控除されるけど、予防のためにかけた費用は控除されないということで、予防医療費の控除を求める声がありました。

セルフメディケーション税制はまさにそうした声に応えて、病院で処方される薬の医療費を抑えて、積極的に予防のための医薬品を常備しようとすることを促す目的で生まれたものだと思われます。(このあたり、制度の成り立ちについて詳しい人がいたら教えてください。)

にもかかわらず控除額の下限が12,000円というのはハードルが高いと思いますし、下限の根拠もよくわかりません。また、予防の取り組みとして予防接種や健康診断を行っている人を対象としているのに、その予防の取り組み費用そのものは控除の対象外というのも片手落ちな印象が否めません。

また、対象となる医薬品の範囲が狭すぎるといった意見もあります。

せっかく予防医療に対する税制のインセンティブができたのだから、もっと利用者が増えるような仕組みへ改善していってもらいたいですね。


ちなみに医療費控除やセルフメディケーション税制は自分で確定申告する必要がありますが、もう2018年度版の確定申告解説本がダイヤモンド社から出てました。まだ中身見てませんがセルフメディケーション税制の文字も表紙に出ていますので、買って読んでみます。

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